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第2章

K氏と事業承継

 税理士の登録をして30年の歳月が流れていた。私にとってはあっという間の30年だ
 四分の一世紀の時間を税理士としてやってこれたのも、ひとえに出会ったお客様や一緒に仕事をしてきた仲間達のお陰だろう。

 出会ったお客様の中には、もう亡くなられた方もいらっしゃる。K氏と出会ったのは20数年前である。
 その時私は事業承継セミナーで講師を務めたさい、受講していたのがK氏であった。県内でも老舗にあたる企業の経営者であった彼は、将来自分の身に起こるだろう相続や事業承継問題を勉強しておきたいと言っておられた。
 真面目で慎重な彼らしく、自ら勉強したいというK氏に対して、私は専門家としてというより、人生の大先輩として心の中でいつも敬意を表し向かい合っていた。

 セミナーの出会いからほどなく私は彼の顧問税理士として、相続・事業承継問題に取組んだ。

 当時も今も、事業承継コンサルタント協会に登録しているコンサルタントは沖縄から私一人だけだった。
 勉強のために上京する度に、事業承継コンサルタント協会の先生方から「沖縄からは山内先生お一人だけなので、すぐ覚えられましたよ。」と言われたのを思いだす。

 相続・事業承継対策と一言でいってもダイナミックに出来るものと、時間を味方に少しずつ先を読んで実行していくものと、その方法もお客様の状況や内容によっても様々だ。

 先のK氏の対策も、ヒアリングを重ね、毎年分析を重ねながらそれを実行に移してきた。
 何十年という時間経過の中で、信頼関係を構築してきたからこそ、出来る仕事である
 彼の心配していた高額な相続税も長年の対策の甲斐あって、準備した納税資金で払える額になり、後継者への道筋も見えてきた。

 会うといつも穏やかで、知的で紳士な彼の為に専門家として、精一杯の知恵を絞る私だった。
 2006年春闘病の末、K氏が亡くなった。遺言通りK氏の息子が会社を継いだ。
 その息子とも、これまでの相続対策の中で何度も会ってきている。K氏からの信託を受けて息子にきちんと事業承継が果たせた。最初はおぼつかないように見えていたが、今では社長職もだいぶ板についてきた。
 若い彼からみると、さしずめ私は兄貴的存在だろうか。

 きりりと逞しくなって私に「先生、相談があります。」と慕ってくる彼を見ていると、事業承継という仕事のスパンの長さと信頼関係の大切さを改めて心に刻むのであった。

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